YouTubeで発見した12年前の中島基樹さん(32歳)の遷延性意識障害動画を文章化しました。筆談・指談による家族とのコミュニケーションや医師の解説、意識の可能性についてまとめています。
中島基樹さんとは?遷延性意識障害の発症経緯
中島基樹さんは北海道大学在学中の2002年1月、サッカーサークルで心臓発作を起こして倒れました。その結果、遷延性意識障害と診断されます。発症後11年間、家族からの呼びかけに応じることはなく、医師からも回復は難しいとされていました。当時の日本の医学界では「遷延性意識障害は回復の可能性がほとんどない」と考えられていたのです。
生き続けるためには、たん吸引などの医療介助が必要で、日々両親が世話をしてきました。
筆談・指談によるコミュニケーションの記録
動画では、お母さんが介助付き筆談・指談で基樹さんと意思疎通する様子が紹介されています。
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お父さんの利明さん:「意識がないと言われると、生命を維持させる選択肢しか残されていなかった」
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お母さんの依子さん:「意識は必ずあるという前提で取り組みたい」
家族が希望を持ち続けた結果、長年意識がないとされてきた患者でも意思疎通が可能になった事例です。
医学的背景と遷延性意識障害の現状
国立循環器病センター神経・脳外科研究室の柳本広二室長によれば、植物状態の人でも約4割が一時的に意識を持つことがあります。
しかし、遷延性意識障害の患者はリハビリ治療日数が180日に制限され、半年以上の経過観察は認められていません。これが意識障害の人に目が向かない理由の一つと言われている。
他の患者との比較:刀野吾朗さんのケース
動画では、刀野吾朗さんが基樹さん宅を訪問しています。
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吾朗さんも交通事故で思い意識障害となり、13年間家族と意思疎通ができなかった
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筆談・指談の方法を参考にしたいと訪問した
コメント欄の声と意識の可能性
動画のコメント欄には「筆談や指談はやらせではないか」という意見もあります。
しかし、私自身の経験では、15年ほど前におばあちゃんの家の大家の娘さん(50代)が急に植物状態になった際、子どもが「お母さん」と呼ぶと眠っていても涙をツーと流したという話を聞きました。こうした体験から、おばあちゃんと「植物状態でも聞こえるんだね、分かってるんだわ」という話をした思い出があります。
そういう体験談を聞いて、遷延性意識障害の人にも意識がある可能性は高いと考えられます。
科学的研究が示す、遷延性意識障害患者の意識
遷延性意識障害患者でも、内面的な意識が存在する可能性を示す研究があります。
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エイドリアン・オーウェン博士(2006年)
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2006年、Science誌に発表。
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植物状態と診断された患者に「テニスをしているところを想像してください」と指示。
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fMRIで脳の運動野が健常者と同じように活動したことを観察。
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結論として「外見上は反応がなくても、内部で理解・想像できる意識が存在する場合がある」と示しました。
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まとめ
この動画は、中島基樹さんの存在や家族との絆、そして遷延性意識障害の人々の可能性を示す貴重な記録です。
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12年前の動画の内容を文章化することで、将来的に消去されても記録として残せる
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意識障害の研究や家族支援の参考として価値がある
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社会における植物状態・遷延性意識障害への理解を広げる資料になる