京都・味土野で見つけた「本当の幸せ」
京都府北部、丹後半島の山あいにある弥栄町味土野(現・京丹後市)。
標高400メートルの小さな集落には、かつて7人ほどが暮らしていました。
その中に、一人で荒れた土地を耕し、無農薬で米や野菜を育てながら暮らしていたのが**梅木好彦さん**です。
彼は親の反対を押し切って農業を始め、いくつもの土地を転々とした末に味土野の地に根を下ろしました。
自然とともに生きる日々の中で、彼は視覚や聴覚に障がいを持つ人々のためのボランティア活動に参加し始め、手話や点字を学びました。
「障がいは人と社会の間にある」─ 運命の出会い
活動を通じて出会ったのが、大阪・岸和田市出身の辻本久代さん。
彼女は、盲・聾・唖という三重の障がいを抱えていました。
しかし久代さんは洗濯や料理、掃除、編み物まで一人でこなし、
都会では鼻の匂いと手の感触だけで買い物もできるほどの力を持っていました。
梅木さんはこう語ります。
「障がいは、人と社会の間にある。人間として欠けているわけではない。」
この言葉とともにプロポーズし、二人は味土野の地で共に生きる道を選びました。
手作りの結婚式と、村人たちの祝福
結婚式は、40年ぶりとなる村での祝福の儀。
村人たちが協力し、手作りのウェディングドレス、料理、飾り付けを準備。
ふたりは自然と人の温もりに包まれながら、静かに夫婦となりました。
自給自足の暮らしと「生きる力」
二人の主な収入は梅木さんが育てる無農薬のお米。
しかし、そこには金額以上の「豊かさ」がありました。
プラスチックごみの回収も年2回。
生ごみは堆肥として土に戻し、すべてを自然の循環の中で生きていました。
最後まで「共に生きる」ということ
2001年に取材されたこの物語は多くの人々の心に深く残りました。
そして2019年、梅木好彦さんは71歳でこの世を去ります。
大益牧雄さんのブログにも書かれありました。
今年の終わり
その後、辻本久代さんは現在、グループホームで生活されています。
動画は長い年月を経て、2024年11月にMSB NEWSがYouTubeで再公開。
再び多くの人の心に「本当の生き方とは何か」を問いかけています。
障がいがあっても、愛し、支え、笑える人生を
梅木さんと辻本さんの生き方は、
障がいがあっても、社会の枠組みの中でも、
「自分の幸せは自分で見つけられる」ことを教えてくれます。
この二人のように「支え合う形の幸せ」も、確かにこの世に存在していることを証明してくれました。